スポーツ栄養士として高校生に関わった1年間

新年明けましておめでとうございます。徳島を中心に食育とスポーツ栄養で活動している坂東賢一です。
本年もよろしくお願い致します。

さて、今回は1年間サポートしたチームとその中の選手についての記録をお伝えしたいと思います。

一昨年の11月から徳島県の高校生のバスケットボールチームのサポートを任されました。スポーツ栄養を本格的にスタートし、半年後のことでした。

まだまだ手探りでやっている中での選手とのやりとりの記録です。

当時、彼は高校2年生でシューターとしてチームのエースを任されていました。

身長はバスケットボール選手としてはそれほど高くなかったので、シュート力とスピードを武器に戦っていたのが印象的でした。

私は彼のコンディションがチームの勝利へのキーだと感じ、一先ず、7か月後の高校総体県予選に向けて準備していくことにしました。

まずは基本的な栄養教育を3本して、食に対する姿勢や感謝の気持ち、またアスリートとしての食事の取り方などを学びました。

そこから個人の食事調査をして、具体的に何を食べているのかを知り、面談をおこないました。

 

食事調査からわかったこと

とにかくウエイトアップを目標に炭水化物(白飯)をたくさん食べていました。

飯をたくさん食べようと努力するあまり、飯が進む肉中心のメニューでビタミン・ミネラルがかなり不足していることがわかりました。

そして食品数が少ないこともわかり、偏った食事内容が続き、特定の栄養素の過不足、もしくはミネラルバランスが崩れることによる、体調不良や慢性疲労によるケガのリスクなどの不安要素がたくさん浮かび上がりました。

食事の写真と栄養価を照らし合わせ、面談をしていく中で彼の家庭の状況も話してくれました。

彼は、父の仕事の都合で彼以外の家族は関西で暮らし、おじの家で生活をしていました。

おじさんの手料理を毎日食べる生活を送っていました。

聞くところによるとおじは料理の基本的な知識はなかったものの、甥っ子(彼)のために一生懸命に料理・弁当を作ってくれていたそうです。

そんな家庭背景も知った上でのサポートをしていくのがプロとしての腕の見せ所です。

まずは監督を通して、保護者会にてサポート内容の説明と交流を持つ時間をいただきました。

その中で保護者から信頼を得ていきました。そして選手を通して食事内容を変えていく中で保護者からも直接質問をしてもらえるようになりました。

直接お願いしたことは、

➀自律神経を整えてコンディションを整えるために亜麻仁油をとってもらう事

②緑黄色野菜を積極的にとってもらう事

上記の2点です。もちろんその他の細かなことは選手に実践してもらいました。

 

選手たちの近くで寄り添った総体までの残り1ヶ月

少し過去をさかのぼります。

私が高校3年生の時の高校総体は準優勝で全国大会の切符を手にすることができませんでした。

その時の悔しさは今も忘れることができません。

そんな想いも重なり、どうしても選手たちの力になりたくて時間の許す限りコートに足を運びました。

以前スポーツ栄養士の先輩に「毎日練習に顔出したよ。そうすると選手の顔色をみるとその日の調子(コンディション)がわかるようになった。」と言われたことがあります。

その時は正直そんなことができるのかと半信半疑でしたが、ほぼ毎晩足を運ぶうちに気がつけば選手のことが分かるようになってきました。

6月の高校総体は梅雨の影響や気温の変化も激しく食欲が落ちるなどの落とし穴が待ち構えています。

コートに立たせるまでは自分の責任だと思い、必死に選手に寄り添いました。

もちろん数か月前から栄養状態、バランスを整えてコンディションが落ちるリスクや体調管理の意識は徹底させてきました。

そして迎えた大会では、何とか準決勝まで勝ち上がり、残り2試合勝てば全国大会に出られるところまできましたが、惜しくも敗れ、目標には届きませんでした。

スポーツ栄養士として、「勝ちたい、絶対勝てる」と想い取り組んだ今回の結果は、眠れないほど悔しさと申し訳なさが残りました。

大会を通し、結果から学んだこと

負けた試合の翌日、気持ちを落ち着かせ彼にこう話しかけた。

「力になれなくて申し訳なかった。本当にすまない。今後の後輩たちのために教えてほしいことがあるんだけどいいかな?」と。

「なんですか?」

「今回のスポーツ栄養としてのサポート内容を正直に評価してほしい」と尋ねました。

「それに関しては、本当にありがとうございました。コンディションは良く、試合の後半でもしっかりと足が動きました。」と清々しく彼は話をしてくれました。

この瞬間、スポーツ栄養士として彼らに関わることができ本当に良かったと感じることができました。

この半年間のサポート内容は彼にはマッチしたことが1つ証明できたことはしっかりと次に活かしていこうと思いました。

 

高校最後のウインターカップ予選を終えて

高校のバスケットボール選手は進路の関係上、夏の総体で引退する子もいれば、10月~12月のウインターカップまで残る選手もいます。彼はウインターカップまで残った3年生の一人です。

総体の雪辱を胸に迎えた高校最後の大会はベスト8で幕を閉じました。

試合終了後、悔しさをにじませながら、保護者に挨拶に向かうと、彼のおじさんと母親が「サポートしていただいたのにこんな結果になってしまってすみません。今まで本当にありがとうございました。」と言ってくれました。

まさかこんなことを言われるとは思っていなかったので、正直驚きましたが、本当に感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

また、彼は大学の志望動機に私と携わったことを書いていたことも伝えてくれ、少なくとも彼の心のどこかに残るサポートができたのかと思うと、この1年間の努力が報われる瞬間でもありました。と同時に「勝利」という言葉の重みを改めて受け止めることができました。

 

彼らや保護者を通して成長することができた1年

今回のサポートは結果だけみると、反省点ばかりが浮かびあがります。

でもその中で感じることのできた選手たちの熱い思いや監督、コーチ、保護者との絆は想像以上に価値があることに気がつくことができました。

そして何より、継続してサポートの依頼をしてくれた監督のお蔭でもう少しだけこの仕事を続けられることは大変うれしく思います。

それは私個人的にそうですが、スポーツ栄養士として評価し、後に続くスポーツ栄養士の仕事の開拓に繋がっていくことが何よりありがたいことだと感じています。

最後に彼は大学でもバスケを続ける予定です。高校で学んだ栄養学を活かしてもう一歩先の景色を見て欲しいと思います。

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