スポーツ栄養とトップアスリート
昨今スポーツ栄養の話題は尽きない。先日のラグビー日本代表の栄養サポートも徹底した食事管理が施されていた。
また世界で活躍しているアスリートもコンディションを整えるため、毎日の食事には気を使っている。
しかしトップアスリートも自分の食事量を知り、最初食べる時は苦労したり、時には泣きながら食べたという話もある。
本来なら楽しいはずの食事が、アスリートにとっては大きな壁となることも少なくはない。
相撲やラグビーなどのコンタクトスポーツは体の大きさや強さが勝敗に大きな影響を与える。
また日本人初のNBAドラフト1位選手が誕生したバスケットボールの競技においても体のぶつかり合いが避けられないものとなってきた。
高校生の栄養サポートをしてわかったこと
現在、徳島県の少年の国体選手を始め、バスケットボールに励む高校生をサポートしている。
私が初めて仕事の依頼をもらったとき、選手たちの体重が思うように増えずに困っていると監督から相談があった。
実際に選手たちに話を聞いたところ、「朝・昼・夕としっかり食べている。」どうしていいかわからないといった表情だった。
そこで、選手15人の3日間の食事調査をして驚いた。
順調に体重が増えている選手も数人いて、その選手はしっかりとバランスの良い食事を朝・昼・夕とも食べていたが、それ以外の選手は米の量を増やすために「肉!肉!肉!」といった具合で全体の栄養バランスが偏っていた。
カロリーを精一杯摂ることは大切だが、その摂取した栄養を消化・吸収するためには微量栄養素のビタミン・ミネラルが必要不可欠になってくる。
まずは、選手たちのサポートをする上で現状の栄養状態を知ってもらうために食事バランスガイドを用いて、野菜・果物・乳製品をしっかりと摂ってもらうようアドバイスをした。
また自宅から通う生徒は親の手料理を食べていたので、親に協力してもらうように伝え方もアドバイスをした。
その裏では保護者会に顔を出し、サポート内容の説明をして理解を得ようと努力をした。
その甲斐あって、現在では食事の写真を自らLINEをしてアドバイスを求める選手もいる。
選手たちと身近に関わる中で、数字(体組成や栄養価)を見て選手を判断するサポートも必要ではあるが、高校生においては食育の視点をしっかりと盛り込んだ栄養教育が大切であるということを改めて感じた。
食育の視点とは
●食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する
●心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事の取り方を理解し、自ら管理していく能力を身に付ける。
●正しい知識・情報に基づいて、食品の品質及び安全性等についても自ら判断できる能力を身に付ける。
●食べ物を大事にし、食料の生産等に関わる人々へ感謝する心をもつ。
●食事のマナーや食事を通した人間関係形成能力を身に付ける。
●各地域の産物、食文化や食に関わる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。
食育の視点から得られた目に見えない効果
文字にするとどこか薄っぺらく感じるが、現代の若い子たちは我々世代に比べてこれらのことをどこか軽視しているように感じる。
それは、大人世代が幼いころに培った素晴らしい食経験があるにも関わらず、世の中の安価な情報ばかりに目が行きそれらを伝えられていないことも理由の1つと感じる。
「食育」を難しく考えずにこれらの視点もって選手たちに関わり伝えていくことで、そこに大きな成果物が生まれてきた。
まずは食に向き合う姿勢が変わり、食事の時間が以前よりさらに楽しく感じたと生徒たちは言う。
また、農家や調理などの食に携わる人たちに興味関心を持つようになってきた。
さらには大学に進学し、栄養学をさらに深く学びたいという学生もあらわれた。
少しずつで遠回りなようではあるが、選手たちのことを第一に考えた食育はスポーツ栄養の価値を高めてくれるものに繋がっていくことを感じた。